こんにちは。新座きりん歯科クリニックです。
歯周病は、歯ぐきが腫れたり出血したりするだけでなく、進行すると歯を支える骨が溶けてしまい、最終的には歯を失ってしまう怖い病気です。
しかし、近年は、再生療法によって失われた歯周組織を再生できる可能性が出てきました。今回は、再生療法の中でも保険適用で行える「リグロス」について解説します。
目次
■再生療法のリグロスの効果
歯周組織は、「歯肉」「歯根膜」「セメント質」「歯槽骨(しそうこつ)」の4つの組織で構成されています。
歯周病が進行すると、歯を支える土台である歯周組織が破壊されてしまいます。これらが壊されてしまうと、歯がぐらついたり、最終的には抜歯しなければならないことも。
今までの歯周病治療は、歯肉の炎症を抑制したり歯周病菌の除去など目的としているため、破壊された歯周組織の再生は困難でした。
しかし、再生医療の進歩により歯周組織の再生を促す治療方法が誕生。その一つが「リグロス」という薬剤です。
リグロスには、歯周組織の再生に必要な細胞の増殖を促進する「bFGF」というタンパク質が含まれています。この成分が歯根膜や歯槽骨の再生を促すことで、抜歯を回避したり歯周病の進行を食い止めたりする効果が期待できるのです。
■リグロスの治療方法
リグロスの治療方法は以下の通りです。
- 1.検査・診断
まず、歯周病の進行状況を把握するために、レントゲン撮影や歯周ポケットの検査などを行います。 - 2.歯周基本治療
リグロス治療を行う前に歯みがき指導、歯石除去、スケーリング、ルートプレーニングなどの歯周基本治療を行い、口腔内環境を整えます。 - 3.外科的処置
歯ぐきを切開し、歯根の表面を露出させます。歯根に付着した歯石やプラーク、感染した組織を徹底的に除去します。 - 4.リグロス塗布
清潔になった歯根の表面にリグロスを塗布します。 - 5.縫合
歯ぐきを縫合し、治療は終了です。
■リグロスのメリット・デメリット
リグロスにも良い面と注意すべき点があります。
リグロスは保険適用のため、比較的安価に治療を受けられます。他の再生療法は、高額な自費診療になりがちですので、費用面での負担が少ないことは大きなメリットと言えるでしょう。
リグロスの効果には個人差があり、生活習慣や歯周病の進行度などによって効果が十分に得られないケースもあります。また、リグロスを注入するため、外科手術が必要になります。
治療を受けるかどうか判断するために、両方をしっかりと理解しておきましょう。
■エムドゲイン・GTR法との違いは?
歯周組織の再生を促す治療法には、リグロス以外にも「エムドゲイン」や「GTR法」があります。
◎エムドゲイン
エムドゲインは、ブタの歯胚(歯のもとになる組織)から抽出されたタンパク質を主成分とした再生療法です。リグロスと同様に歯周組織の再生を促進する効果がありますが、保険適用外です。
◎GTR法
GTR法(Guided Tissue Regeneration:組織誘導再生法)は、「メンブレン」と呼ばれる特殊な膜を、歯周病で破壊された歯槽骨に覆い、歯肉が歯槽骨に癒着するのを防いで歯根膜や歯槽骨の再生を促す治療法です。
歯周病が重度に進行している場合に有効な治療法ですが、保険適用外です。
■リグロスに関するよくある質問
ここでは、リグロスに関するよくある質問と回答を紹介します。
◎リグロス治療の費用は?保険適用でどのくらいかかる?
リグロスは保険適用で受けられます。費用は、歯周病の進行度合いや治療する歯の本数、範囲によって異なります。目安は1~3万円程度の自己負担で済む場合が多いです。
ただし、保険適用の治療費に加え、初診料や検査料、薬剤費などが別途かかる場合があります。
◎リグロス治療後、どれくらいで効果が出るの?
リグロスは治療後すぐに効果を実感できるわけではありません。効果が現れるまでの期間は個人差がありますが、一般的には数ヶ月~1年程度かかります。
◎リグロス治療はどこで受けられるの?
すべての歯科医院でリグロスが受けられるわけではありません。歯周病治療を得意とする歯科医院で受けることができます。リグロス治療を検討している場合は、まずは歯科医院に問い合わせてみましょう。
◎リグロス治療後に喫煙しても大丈夫?
喫煙は歯周病の進行を早める最大の要因の一つです。治療中はもちろん、治療後も禁煙することをおすすめします。
◎リグロス治療はどのくらい持続するの?
リグロス治療は、一度受ければ終わりではありません。治療後のケアを怠ると効果が持続せず、再び歯周病が悪化してしまう可能性があります。
毎日のケアをしっかりと行い、定期的にメンテナンスを受け続け、お口の健康維持を目指しましょう。
【歯周病を予防して健康な歯を維持するために定期検診で早期発見・早期治療】
リグロスは、歯周組織の再生を促す薬剤です。歯周病で溶けてしまった骨の再生を促し、歯周病の進行を食い止める効果が期待できます。保険適用なので、比較的安価に治療を受けられます。
しかし、リグロスはあくまで歯周病治療の選択肢の一つです。歯周病を悪化させないためにも、日々のセルフケアをしっかりと行い、歯科医院で定期的にメンテナンスを受けて健康な口腔環境を維持することが大切です。