
こんにちは。新座きりん歯科クリニックです。
「毎日鏡の前で丁寧に磨いているのに、なぜか歯ぐきから血が出る」
「歯医者さんに行くたびに、また磨き残しがあると言われて落ち込む」
一生懸命ケアしているのに結果が出ないと、磨き方が悪いと自分を責めてしまいがちです。しかし、あなたが歯周病になってしまったのは、必ずしもあなたの努力不足のせいではありません。
歯周病は細菌感染だけでなく、歯ぎしりや食いしばりといった噛み合わせの力が関係していることが分かっています。無意識のうちにかかる強い力が、歯周病を悪化させているケースもあるのです。
そこで本記事では、意外と知られていない歯周病と歯ぎしりの関係について解説します。
■歯周病とは?
そもそも、歯周病とは口の中で何が起きている状態なのでしょうか。歯周病は一言で言えば、細菌による感染症です。
食事をした後、歯の表面に白くネバネバしたものが付きますよね。あれが「プラーク(歯垢)」です。たった1mgのプラークの中には、約1億個もの細菌が潜んでいるといわれています。この細菌たちが毒素を出し、歯ぐきの腫れや出血を引き起こします。
放置すると炎症はさらに奥へと進み、歯を支えている「歯槽骨(しそうこつ)」という骨を溶かし始めてしまうのです。
■歯周病の原因
歯周病は「3つの要因」が重なり合って発症する病気です。
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1.細菌:プラークや歯周病菌の数・強さ
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2.環境:歯ぎしり、噛み合わせ、生活習慣など
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3.体質:免疫力、年齢、遺伝、糖尿病など
これら3つの円が重なり合った部分で、歯周病は発症・進行します。もしあなたが、歯みがきを頑張っているのに症状が改善しないのであれば、「②環境」と「③体質」を疑ってみましょう。
特に影響しやすいのが、歯ぎしりや食いしばりです。歯に過度な力がかかり続けると、歯周組織がダメージを受け、炎症が悪化しやすくなることが分かっています。
■歯ぎしりが歯周病を悪化させるメカニズム
「私は歯ぎしりなんてしてないよ」と思うかもしれません。しかし、専門的に「ブラキシズム」と呼ばれるこの習癖は、音が出るものだけではありません。大きく分けて3つのタイプがあります。
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・グラインディング(歯ぎしり):上下の歯をギリギリと横に擦り合わせるタイプ。寝ている時に多いのがこれです。
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・クレンチング(食いしばり):音を立てずに、ぐっと強く噛みしめるタイプ。日中、何かに集中している時にも起こります。
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・タッピング:カチカチと上下の歯をぶつけるタイプ。
では、なぜ歯ぎしりが歯周病によくないのでしょうか。
通常、食事の時にかかる力は自分の体重程度(数十キロ)ですが、寝ている間の歯ぎしりでは、リミッターが外れてその5〜10倍、時には100kg近い力がかかると言われています。過度な力がかかることで、歯槽骨の破壊が進んでしまうのです。
さらに最近注目されているのが、TCH(Tooth Contact Habit:歯列接触癖)です。通常、安静にしている時、上下の歯は接触しておらず、2〜3mmの隙間が空いています。
実際に歯が触れ合っている時間は、食事や会話を含めても1日20分程度しかありません。しかし、パソコン作業やスマホを見ている時などに、無意識に上下の歯をくっつけ続けている人が増えています。
強い力でなくても、「長時間触れているだけ」で顎の筋肉は緊張し続け、血流が悪くなります。これが歯周組織へのじわじわとしたダメージとなり、歯周病を悪化させる原因になるのです。
■歯ぎしり・食いしばりへの対策
効果的なのは、歯科医院で自分専用のナイトガード(マウスピース)を作ることです。寝ている間に装着することで、歯にかかる過剰な力を分散させ、直接的なダメージを防ぐことができます。
市販のものもありますが、フィット感が悪いと逆効果になることもあるため、歯科医院での作製を検討することも大切です。
また、日中のTCH対策として、気づいたら歯を離すという習慣をつけることも重要です。「歯を離す」と書いた付箋をパソコンのモニターやトイレなど目につく場所に貼り、それを見たら肩の力を抜いて歯を離す。
これを繰り返して、脳に歯が離れているのが普通と覚え込ませましょう。
【歯周病は磨き方と力のコントロールで防ごう】
歯周病は「細菌・環境・体質」の3つの要素が重なることで発症します。中でも見落とされやすいのが、歯ぎしりや食いしばりといった環境の要因です。
特に注意したいのが、睡眠中の歯ぎしりや、日中に無意識に上下の歯を接触させる「TCH(歯列接触癖)」です。強すぎる力が、歯槽骨にダメージを与え、炎症を悪化させるきっかけになってしまうことも。
対策として、毎日の丁寧なブラッシングに加え、力のコントロールを取り入れましょう。歯科医院で作製するマウスピース(ナイトガード)を活用したり、日中に「上下の歯を離す」よう意識したりするのがおすすめです。
「もしかして歯周病かも?」と少しでも不安な方は、当院へお気軽にご相談ください。





